ニューヨークで運転免許を取得した
10/23/2021, 2:59:52 PM
前回からの続き。
再教習
Astoria Heightsでの試験を8月27日に予約した(してもらった)のだが、日時は10月21日 午後1時。2ヶ月空いてしまった。国際免許もとうに切れていて日本にも戻れないし、運転の練習はできないまま2ヶ月を過ごす。いやまあ会社の人とか誰かに頼めば練習とかさせてもらえたかもしれないけど、前回にも書いた通り、練習不足で危なっかしい運転をしているわけではないんだこっちは。待ってろNew Jersey、It's my life。
10月20日。前と同じくCiti Bikeに乗って待ち合わせ場所へ向かう。前回と同じ教官と、同じプリウスに乗って練習開始。少し離れて交通量が減った場所で一旦止める。教官「で、前回は何が減点されていましたか?」
「それがですねえ...とにかく全部、でした。右折も左折も、縦列駐車も3点ターンも、その他fail to observe、speed、などあらゆる点にチェックが入っていて、かえって参考になりませんでして...」
「その後練習されたんですね」「いえ、車に乗っていません」「え、ああそうですか。じゃあ試験官が試験中どんな様子だったか覚えていますか?」
ここで前回に書いた内容を話す。「自分を贔屓目に見ているのはわかっていますし、絶対に何かミスをしていると思いますが、最後ブレーキを踏まれたところだけは本当に、そんなことになる状況ではなかったと思っています。」
「うーん、ここまで来た感じで気になったのはスピードが遅いことくらいで、右折と左折もしましたが問題を感じませんでした。うーん」と、何を練習してもらおうかねえという感じになってしまう。だって問題なく運転できているんだから。問題はスピードが遅いことだっていうんだから。20マイルでSlow downって怒鳴られたあれは何だったのか。
練習としては、最初のときと同様に縦列駐車と3点ターンをまずはおさらい。おさらいと言っても縦列駐車はやっぱり成功率60%みたいな感じで、狭いところ、坂になっているところ、いろんな場面でやらせてもらった。最後に教官の発案で狭いけど目抜き通りでガヤついている道へ行って、判断の練習をしましょうということになった。場所を正確に覚えていないのだが、Astoria Heightsからはだいぶ離れた片側一車線、両側に店が並び、バスも通る道へ。人はひっきりなしに道路へ飛び出してくるし信号はあってないようなもの。Outdoor diningの小屋が道をますます狭くしている中を、それなりに進む。
最終的な教官の助言は「たぶんだけど、右に寄っているのが怖かったんじゃないかな。右側を常に1メートル空けておくことを意識して、試験官を怖がらせないようにすればいいと思う。試験に合格するだろう運転をしていると思えるので、相性が悪かったと思うしかない。そういうことってあるんですよ」。
そもそもキープライトだし、片側一車線の道路で無意味にセンターラインに寄るのは、対向車線から飛び出て来られて運転者である自分に被害が出るリスクが高まるから、無意識に避けている。ただ、知らん運転者の運転でびくついているところにもってきて自分の真横に空間がないと、確かに不安になるだろうとは思った。運転免許試験の教官はこの方しか知らないのだが、この方は説明も的を射ているし、こういう何というか情緒的な話も納得できるように説明してくれる感じで、非常に好感度が高い。Fuji Driving SchoolでAstoria Heightsで試験をするとこの方に当たると思いますが、おすすめできます。ありがたかった。ありがとうございます。
天使降臨
翌21日。はあ、嫌な思いをわざわざしに行く日だ、と朝から気が重い。昨日から休暇をもらっているので、会社の連中にもまた落ちたことについてどう話そうかと考えてますます気が重い。
11時半に待ち合わせで11時ごろ到着し、30分ほどcalm downする。落ちたら$1000ドブに捨てるんだなあとか考えてますます落ち込んでいたら、目の前を幼稚園児が15人くらい引率されてやってきた。ああこの辺はこういう場所なのかあと思ってぼーっと見ていたら、中にいた一人の子がこちらを見上げ、可愛らしい満面の笑みで「Hello」と手を振ってきた。うわなんだこれ、天使か、天使って実在するのか、と思った。こちらも慌てて「ハロー、はうあーゆー」と手を振りかえした。別の子もそれを見て「Hello」「ハロー」。なんか引率の先生はブスッとしていたが、天使たちはそのまま通り過ぎて行った。
直前練習
この日も直前練習。縦列駐車に何度か失敗し、アドバイスをいただき、全体としては「合格できる技量は持っていますからあとは落ち着いて」。
「それと、前回と同じ試験官に当たったときは拒否できますから。講習修了証にIDが書いてあるので向こうから聞いてきますから。同じ人でもう一度やる必要はないですからね。」
へえそうなんだ。まあでも人が違ってもどうせ同じ対応されるんでしょうね、どうせ落ちますよ。待ってろNew Jersey、I'll be there for you。
最後に右左折を繰り返して60分弱の練習を終え、運転を交代して試験会場へ、12時半過ぎに到着したところたぶん試験官は昼食休憩でおらず、前に4台ほど待っている状態。持っていったバーをかじって水を飲む。「右の間隔を空ける」「アクションする前にobserveする」をひたすら頭の中で繰り返す。
試験本番
1時過ぎ。順番が回ってくる。前回の試験官は見当たらず、違う人になった。「はいじゃああなたは運転席に乗って」付き添いの教官も今回はわかっていて、助手席の側を拭く。試験官が乗り込んできて、「名前と生年月日をどうぞ」「はい今日のテストは右折、左折、縦列駐車、3点ターンをします」「準備ができたらスタートしてください」
この時点ですでに雰囲気が全然違った。まず「これはお前だな?」とか言ってタブレットに映っている写真を見せてきたりしない。窓を全開にしろとも言わない。何というか、ピリピリ感がない。こちらの気の持ちようも全然違ったんだろうから客観的では全くないが、それなりに緊張していたけどそれをさらに助長するようなピリピリした雰囲気は、この試験官からは感じなかった。
発進、してすぐに前方に止まっている車の横で縦列駐車。後ろから車が来ていたのでそれをやり過ごして駐車。問題なし。発進。Stop。右折。次の道で右折、と言われたところで、真横のバイクレーンをランナーが走ってきた。優先道路からそうでない道への右折だが、ランナーをやり過ごすために停止。やり過ごしてから右折。pull overして3点ターン。開始して反対車線に首を突っ込んだところで、こちら車線へ車が来る。ちょっと迷って、反対車線にギリギリまで首を突っ込んで通してあげる。ここで試験官に「You don't have to do that. They will stop if they can't go.」と言われる。
もうこちらは避ける意思を示したので、向こうは通り過ぎる。すると後ろにもう1台きていたが、向こうは止まったので今度はバックして3点ターンを終了する。試験官はここで「まあcourtesyを示すのは悪いことじゃないけどね」。出て左折して、左折して、左折して「あの黒いバンの後ろに止めて」終了。あれ、なんか早過ぎないか?あれやっぱまずかったのか?と思ったが、また名刺大のカードを渡されて「午後6時以降にここを見てください」「Thank you so much」「You are welcome」で終わった。
教官が来たので助手席へ移動して帰る。「どうでしたか」「なんか終わるの早過ぎませんか?」「いや?そんなことはないと思いますけど」3点ターンのときの出来事を説明し「それならうーんまあ問題ないでしょう。それだけなら取られても-10点だし」「それ以外は今度こそ本当に何もなかったと思います。結果はわかりませんけど」駅で降りて、チップを渡して別れる。
とにかく今回の試験官はやりやすかった。3点ターンのときも、それでにわかに雲行きが怪しくなるという感じはまったくなく、その後も普通に余裕を持って左折とか、前方に車線を塞いでいる車がいるときに「You can go」とか言ってくれた。考えてみると、指示が早いのが大きい。曲がるだいぶ前に曲がると言ってくれるし、曲がった先で3点ターンをするのもあそこの車で、とだいぶ前に言ってくれる。そりゃそうで、こっちは知らない道を自分が行きたい場所でも何でもない場所へ運転させられているわけで、次に何をするかあれくらいの余裕を持って指示してくれなければ対応しようがない。前回の試験官の「はい左折、おいスピード落とせよ、もう通り過ぎたよ」ってあれ、あんなの対応できるわけない。あそこで左折したかったのは俺じゃないんだから。今回の試験官はとにかく敵意みたいなものを感じないし、余裕を持って対応してくれたし、なんかセンターライン寄りに走っておくみたいな謎配慮は全然必要なかった(そもそもそんな狭い道じゃないし)。相性...か。
結果発表
家に帰ってシャワーをして昼寝して午後6時になったのでサイトにアクセスしてみると結果は不合格。やっぱり、と思って確認すると前回の結果だった。しばらく待ってもう一度アクセスすると今度は合格が表示された。右折のwideで5点引かれていた。3点ターンにまつわる減点はなし。サンクコスト回収。New Jerseyに引っ越さなくてよくなった。Keep the faith。
そういうわけで10万円強かけて無事ニューヨーク州の運転免許を取得できた。8月末からの2ヶ月間はずっと嫌な気分を引きずっていたし、あの日からしばらく夢にみたし、ふとしたときにあのシーンを思い出して胸がギュッとなったし、ニューヨークに来て以来最悪の嫌な体験だった。終わりよければとは言うが、あの体験は忘れられそうにない。二度目の試験官は良かったけど、それも普通以上に素晴らしい対応をしてもらったわけじゃなくて、職務を職務としてこなしてくれていただけだと思う。相性、で片付けるには後味が悪すぎる体験だった。